■ 写真 朝の日常の記憶
■ コメント
朝の通勤ラッシュを撮らせてもらった。夏休みに入ったとはいえ7月の暑い朝・混
雑した電車に乗って通勤する方々は本当に大変だと思う。私にも一応その経験はあ
るが視覚障害になったときからその必要がなくなった。ほっとした反面、一般社会
からだめ人間の烙印をおされて放り出されたみたいな寂しさもあった。あれからも
う40年が過ぎた。
あのころ私は混雑した電車も嫌いではなかった。たまたま同じ電車に乗り合わせた
人々をみて勝手な想像をふくらませて物語を作るのが好きだった。
扉の近くで外を見ている髪の長い女がいる。おそらくその目に外の風景は映って
いないのだろう独特な寂しさを漂わせている。窓からの光はその美しい顔に独特な
影を形づくっていた。
彼女には結婚を考えてもいいと思える恋人がいる。同じ職場のTである。ここ半
年ほど二人は職場の誰にも知られないようにひっそりと関係を重ねてきた。だがT
には妻がいることを昨日たまたま職場の友人たちの会話で知ったのである・・・。
ときどき窓の外に向ける目が少し赤いのは昨晩ほとんど寝ていないに違いない。今
日職場でTにどういう顔をすればいいのか・・どう問いただせばいいのか・・これ
から自分はどうすればいいのか・・その乱れて重い気持ちを抱えてこの電車に乗っ
ているのである。ぜったいそうだ!そうに決まっている!
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